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紅麹サプリによる健康被害
紅麹サプリメントによる健康被害問題では,今年3月29日の小林製薬による記者会見を受けて当方にもメディアからのコメント依頼が相次いだ1) 2)。健康被害の原因特定に関しては,製品に混入していた未知の物質の一つがプベルル酸であることが明らかになり,同化合物に注目が集まった。後にプベルル酸単品及び製品(プベルル酸及び化合物Y、Zを含む)をラットに投与した結果,近位尿細管の変性・壊死等の所見がみられたことが厚労省より公表された3)。これら本来混入していないはずの化合物が,健康被害を引き起こした原因である可能性が高まってきた。健康食品は,健康の維持や疾病予防に寄与する材料の一つとして,補完代替医療分野において重要な位置づけにある。この機会に当該健康被害問題に関して所感を述べておきたい。
先ずは,この健康被害問題が発覚後,各メディアの報道を見ていると少々論点がずれている気がしてならない。紅麹そのものには何ら原因がないにもかかわらず,健康食品やそこに含まれる機能性物質自体が悪いかのような風潮が高まり,他の健康食品に対する信頼性にも影響が波及していると聞く。これについては残念な気がしてならない。ただ「機能性表示食品」に関しは,制度面から国がしっかりと監視すべきである。消費者庁は,6月27日の消費者委員会で,機能性表示食品に求められる表示事項などを定める,食品表示法に基づく内閣府令の「食品表示基準」の改正案を示した。この改正案に基づき,健康被害情報の収集と報告については,この9月から義務づけられ,「GMP(適正製造規範)」に沿った製造・管理についても2026年の9月から義務づけられる見通しとなった。これらの動きについては,遅まきながら大いに評価したい。特に後者については,当方も以前から懸念していた点であるが,問題発覚直後の4月5日には,(一社)日本食品安全協会から北市清幸理事長名で「紅麹製品問題に関する協会声明」が出されていた。そこでもやはり下記のような問題点が指摘されていた。「本問題が起こった一因は、現在用いられている健康食品GMP(適正製造基準)が脆弱であったことによると我々は考えています。健康食品GMP を遵守していたとしても,有害な成分が製品に含まれてしまう工場環境や原材料管理,有害な成分の有無を検出できないあるいは有害な成分を含む製品の出荷を止められない製造管理,品質管理,になっていることが大きな問題です。」4)。また,(一社)日本GMP 支援センター理事長の平野和行氏もこの問題に関する考察の中で,「医薬品と同じように,欧米並みの国が関与する健康食品GMP 体制の早急な構築が必要ではないでしょうか。」5)と述べている。
先月末にまたも驚くべきニュースが飛び込んできた。武見敬三厚生労働相は,6月28日,新たに摂取との因果関係が疑われる死亡事例が76件あったと発表した。死亡事例は小林製薬が厚労省に報告することになっていたが,これまでは5件のみであった。死亡事例の更新について同省が問い合わせたところ,小林製薬から170事例について報告があり,このうち91事例は摂取していなかった。残る79事例のうち,3件には因果関係がないことが確認できたという。機能性表示食品は,トクホに比べて開発にかかる期間や費用を圧縮できる。其の分安全性や機能については,企業の自己責任となる。企業の自己責任の重みがどこまで理解されていたのか,疑問に思わざるを得ない。
先ずは,この健康被害問題が発覚後,各メディアの報道を見ていると少々論点がずれている気がしてならない。紅麹そのものには何ら原因がないにもかかわらず,健康食品やそこに含まれる機能性物質自体が悪いかのような風潮が高まり,他の健康食品に対する信頼性にも影響が波及していると聞く。これについては残念な気がしてならない。ただ「機能性表示食品」に関しは,制度面から国がしっかりと監視すべきである。消費者庁は,6月27日の消費者委員会で,機能性表示食品に求められる表示事項などを定める,食品表示法に基づく内閣府令の「食品表示基準」の改正案を示した。この改正案に基づき,健康被害情報の収集と報告については,この9月から義務づけられ,「GMP(適正製造規範)」に沿った製造・管理についても2026年の9月から義務づけられる見通しとなった。これらの動きについては,遅まきながら大いに評価したい。特に後者については,当方も以前から懸念していた点であるが,問題発覚直後の4月5日には,(一社)日本食品安全協会から北市清幸理事長名で「紅麹製品問題に関する協会声明」が出されていた。そこでもやはり下記のような問題点が指摘されていた。「本問題が起こった一因は、現在用いられている健康食品GMP(適正製造基準)が脆弱であったことによると我々は考えています。健康食品GMP を遵守していたとしても,有害な成分が製品に含まれてしまう工場環境や原材料管理,有害な成分の有無を検出できないあるいは有害な成分を含む製品の出荷を止められない製造管理,品質管理,になっていることが大きな問題です。」4)。また,(一社)日本GMP 支援センター理事長の平野和行氏もこの問題に関する考察の中で,「医薬品と同じように,欧米並みの国が関与する健康食品GMP 体制の早急な構築が必要ではないでしょうか。」5)と述べている。
先月末にまたも驚くべきニュースが飛び込んできた。武見敬三厚生労働相は,6月28日,新たに摂取との因果関係が疑われる死亡事例が76件あったと発表した。死亡事例は小林製薬が厚労省に報告することになっていたが,これまでは5件のみであった。死亡事例の更新について同省が問い合わせたところ,小林製薬から170事例について報告があり,このうち91事例は摂取していなかった。残る79事例のうち,3件には因果関係がないことが確認できたという。機能性表示食品は,トクホに比べて開発にかかる期間や費用を圧縮できる。其の分安全性や機能については,企業の自己責任となる。企業の自己責任の重みがどこまで理解されていたのか,疑問に思わざるを得ない。
【参考資料】
1)毎日新聞 2024年(令和6年)3月30日,3面「「紅麹」被害 見えぬ全容」内でコメント.
2)東京新聞 2024年(令和6年)4月2日,16-17面「アベノミクスの一環「機能性表示食品」揺らぐ信頼」内でコメント.
3)小林製薬社製の紅麹を含む食品の事案に係る取組について(国立医薬品食品衛生研究所)2024年4月19日,厚労省公表資料(代表的な所見例:4/24速報).
4)「紅麹サプリメントに関しての協会声明」2024年4月5日,一般社団法人日本食品安全協会,https://www.jafsra.or.jp/information/info.php?seq=929
5)平野和行「小林製薬の製造した紅麹原料が引き起こした健康被害の問題に対する考察」2024年4月1日,一般社団法人日本食品安全協会,https://www.jafsra.or.jp/information/info.php?seq=926