遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.093
「医薬品の安全性と法」(エイデル研究所 刊)の薦め

  ”科学” は、我が国では、よく「基礎」と「応用」に分けて論じられますが、”医学” の場合は、これをよく ”基礎” と”臨床” と言います。

  その”臨床医学” にあっては、診断と治療に亘る全ての医行為は「医療法」、「医師法」から”療養担当規則”(正式には「保険医療機関及び保険医療養担当規則 」ですが、現場では逆に更に略して”療担” と言わたりします)といった『法』や『規則』によってガッチリと規制されています。

  ですから、”基礎医学” の中には、これら法規制の在り方など万般を論じる ”法医学” なる領域があって然るべきです。しかし現実には、日本の「法医学」は、歴史的にみると、刑事事件に関連し、特に司法解剖に関係する分野と認識されてきていので、医学・医療の法的側面万般を対象とする ”医事法学” とでもいうべき領域は我が国には存在しません。これは、「医事法学」をキーワードにしてググってみても殆ど何も出てこない事実で分かります。具体的には、医学部という教育研究組織の中に、「法医学教室」は有っても、「医事法学教室」は存在しないのです。

  これを我々が属する日本の「薬学」について見ててみますと、かつては医学部の「法医学教室」に対応して、犯罪に使用された毒物の科学的(多くは化学的)判定を受託する「裁判化学教室」を持っていました。これが戦前の日本の ”薬学” (医学部薬学科あるいは薬学部)だったのですが、第二次世界大戦後には東京大学薬学部を初めとする薬系大学の研究者自身がこうした教育研究単位を消滅させてしまいました。ですから、最近大膨張したのに、全国何処の薬系大学にも、「薬事法学教室」など有りよう筈もありません(僅かに東邦大学薬学部に秋本准教授が主宰する ”薬事法学研究室” があるのが唯一の例外です)。

  こうした歴史的、社会的背景のもとで、以下のように、副題とはいえ単行書籍の表題の中にハッキリと「薬事法学のすすめ」と銘打った立派な本が発刊されました。

医薬品の安全性と法 ー 薬事法学のすすめ
http://www.eidell.co.jp/book/
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1106494953/

  これは積極的な薬害防止活動を長年継続して行っている「薬害オンブズパースン会議」の方々の実践の中から生まれた立派な学術書で、「薬事法学」のテキストブックを目指して、「・・・ いまこそ新しい 学問分野『薬事法学』の構築を ・・・」とアッピールしておられます。執筆陣には、同会議のメンバーである弁護士さん5名の他に、以下のように、薬学と看護学の分野からお二人が加わっています。

 序章   薬事法学の基本原理(鈴木利廣)
 第1章  医薬品の安全性確保の歴史(後藤真紀子)
 第2章  医薬品の開発から市販後まで(関口正人)
 第3章  基本的考え方─医薬品監視の4原則(水口真寿美)
 第4章  企業のマーケティング戦略と監視(後藤真紀子)
 第5章  臨床研究の法と倫理─被験者保護と医薬品評価(水口真寿美)
 第6章  承認審査(八重ゆかり) [ 看護学分野から ]
 第7章  市販後安全対策(水口真寿美)
 第8章  情報公開(関口正人)
 第9章  医薬品の開発と未承認薬(寺岡章雄) [ 薬学分野から ]
 第10章 一般用医薬品(中川素充)
 第11章 医薬品被害の救済(鈴木利廣)

  なお、同会議が発足して以来ずっと事務局長を務めておられる水口真寿美弁護士には、下記の如く、去る2015年3月28日、日本薬学会第135年会(神戸)で、恒例の薬学図書館協議会が主催するシンポジウム「患者目線に立った医薬品の追求 ―研究から市販後の対応まで―」

 3) シンポジウム:13:30-16:00  K会場 神戸学院大学 B号館 2F B202
 http://www.yakutokyo.jp/news/2014/12/12/70

  において、「医薬品の安全対策における倫理と課題」と題してご講演をいただいておりますので申し添えます。


2015/04/03