遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.092
ノンアルコール系ビール飲料が ”トクホ” に認められる ?!

  世の中には、意味がハッキリしてそうでいて実は内容が極めて漠然としている “語”が、日常平然と使われている例が結構沢山あります。「健康食品」はその典型です。

  裏返して考えてみてください。 そもそも、反意語として、「不健康食品」なんて言葉が存在し得ますか? 有り得ないですよね。つまり、「食品」という言葉は、初めから “食べたら健康に役立つ“ という概念で裏打ちされているのですから、「健康食品」なる語は、読みとしてではなく、意味の上からですが、完全に『 重箱』なのです。「食品」という言葉だけで十分じゃないですか。

  ですから、健康増進法や、関連する“保健機能食品”や、“特定保健用食品“ (いわゆる「トクホ」)などの規定の何処を読んでも、行政も ”触らぬ神に祟りなし“ として逃げたのでしょうか、 「健康食品」は法的には全く定義されておらず、厚労省、消費者庁といった所管官庁の文書でも、 ”いわゆる健康食品“ (参照:健康食品 )といった曖昧模糊たる表現に終始しているのです。

  こんな不可解な世界ですから何が起こっても驚くには当たらないのですが、小生にとっては唖然とするばかりの、「ノンアルコールのビールを ”トクホ” に認める」という事態が最近起こりました。 トクホの認可の所管が厚労省から消費者庁に移った時からこうしたことが懸念されたのですが、案の定早々と実にいやなことが起こったのです。

  これを伝える報道は山ほどあるので、以下には代表的な2例をご紹介します。

  • すなわち、 消費者庁は2015年2月18日、 サッポロビールと花王がそれぞれ申請していた、ビール系のノンアルコール飲料2製品(サッポロビールの 「サッポロプラス」と花王の「ヘルシアモルトス タイル」で、いずれも350ミリリットル缶などで発売される予定)に対して、特定保健用食品(トクホ)の表示を許可したのです。しかも、この決定は、消費者庁の諮問を受けた内閣府消費者委員会が出した「不適切である」とする答申を覆したものなのですから驚きで、ノンアルコール飲料のトクホは初めてとなるのですから。

         消費者委員会は昨年8月の答申で、健康に役立つイ メージに引かれて未成年者が飲み、飲酒を誘引する恐れがあると指摘していたのですが、消費者庁は、2製品ともトクホの要件である健康維持への有効性 と安全性が認められ、許可が妥当と判断したというのです。 ただ、未成年者が通常の清涼飲料と間違えて手に取ることがないように、アルコール飲料販売機の隣に並べるなどの基準を徹底することを許可の条件としてはいるのですが。

         「サッポロプラス」は“食物繊維の働きで糖の吸収 を穏やかにする”、「ヘルシアモルトスタイル」は 「茶カテキンを豊富に含み、脂肪を消費しやすく する」との表示をそれぞれ予定し ているそうです。

       (トクホに初のノンアル飲料 「不適切」答申覆し 許可 2製品に消費者庁 共同通信 2015年2月18日 から)

  • 特定保健用食品(トクホ)の表示が初めて2製品に許可されたノンアルコール飲料は、アルコールが苦手な体質の人や、車を運転する人でも「飲んだ気分」を味わえるとして人気を集めてはいるものの、未成年者の飲酒につながる懸念も根強く、実際に発売された後は店頭での取り扱い方などが問題となりそうです。

     主婦連合会が2012年の8~9月に、消費者100人に実施したアンケートでは、7割がノンアルコール飲料を飲んだことがあると回答し、「甘みが少なくすっきりしている」との評価がある一方で、3分の1が未成年の飲酒の引き金になりかねず不安だと答えています。中には「子どもに『僕たちが飲んでもいいビールだよね』と言われ困っている」との声もありました。

     同会の山根香織会長は「そもそもノンアルコール飲料は飲酒の垣根を低くする商品。さまざまな議論があるのにトクホという国のお墨付きを与えるのは問題だ」と指摘しています。

     一方、製造・小売団体側は、「ノンアルコール飲料は成人の飲用を想定している」として、製造販売時の基準を改正し、20歳以上の者を対象とする商品であることを表示するなどをきめています。

       (未成年の飲酒招くと懸念 店頭取り扱い課題に  共同通信 2016年2月18日 から)

  さて、皆さんは如何お考えになるでしょうか。


2015/02/28