遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.090
再び、エボラ出血熱治療薬の臨床試験について

  一般論としては、類薬のない新しい医薬品候補物質の有効性を確認するためには、偽薬(placebo)群を置いた「治験」が必要であるのは論を待たないことではあるのですが、今世界を震撼させているエボラ出血熱のように、致死率が極めて高い疾患なのに未だ公式に認められた治療薬が存在しない場合にも、杓子定規にこの論議を適用すべきでしょうか? 前号No. 89:「エボラ出血熱治療薬の試験に “偽薬試験” は必要か ?」においては、

エボラ治療薬、欧州「偽薬治験なし」投与計画に米が異議 WSJ 2014 年 10 月 31 日 http://jp.wsj.com/news/articles/SB11875414796426453974304580247931566430848

を題材にして、なかなかに難しいこの問題を論議しました。

今回は更に、その後間もなく発行された

Nature Medicine Vol.12 No.12 December 2014 Editorial
未承認薬の人道的使用を考える Principled compassion http://www.nature.com/nm/journal/v20/n12/full/nm.3772.html

をご紹介してみましょう。

  研究中の新薬が患者の命を救ったり、あるいは生存期間を延長したりすることがある。症状が極めて重篤で生命が脅かされている患者が試験中の新薬を使用できることは米国では2009年に成文化されているが、患者がこうした薬を使用するのは実は非常に難しい。それは製薬企業が臨床試験以外での使用に薬を提供するのを、さまざまの理由で拒否するからである。

  「人道的使用」をもっと容易にできるようにしてほしいという一般からの圧力の高まりを受けて、米国の5つの州ではこの「試す権利」が法制化されたが、その内容からすると実効があるかは疑問で、またこうした規制は臨床試験システムを危うくする危険性もある。このような生死を分ける問題については、製薬企業だけに決定権を委ねるのはやめて、製薬企業と規制側の両方が現実に即した対策を立てるべきだろう。FDAは監督を強化し、臨床試験システムの本来の使命、つまり「安全で有効な薬をできるだけ多数の患者に、できるだけ迅速に届ける」という使命の実現に努力してもらいたい。
http://forcast.emailalert.jp/c/al6Eai4CopcXqhac

  Investigational drugs can save or extend lives, and seriously ill patients not able to take part in clinical trials should have access to such drugs whenever possible. In a climate of increased public pressure for this access—often termed compassionate use—five states in the US have passed so-called 'right to try' legislation. These laws are ill advised, as they are not likely to substantially increase access and have the potential to compromise the clinical trial system. Under rules first established in 1987 and then clarified and codified in August 2009, the US Food and Drug Administration (FDA) allows patients who have serious and life-threatening conditions access to investigational drugs. Under these rules, the patient seeking access must not be eligible for an existing clinical trial and must obtain both approval from an institutional review board and an agreement from the company developing the drug to provide it. The FDA then decides whether to approve the request, considering, among other factors, whether the potential benefit justifies the potential risks and whether expanded access would compromise the clinical development of the drug towards marketing approval. ・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・

  なお、この “未承認薬の人道的使用 compassionate use of unapproved drugs”の問題については、この「遠藤浩良の雑記帳」のサイトにおいても既に

No.033 勝れた総説「未承認薬のコンパッショネート使用」
No.049 未承認薬のCU制度創設を提起する新刊書紹介
No.065 再び、医薬品の「コンパッショネート使用」について

と採り上げておりますので、これらもご参照ください。


2014/12/26