遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.081
新刊書「ワクチン学」(山内一也・三瀬勝利;岩波書店、
2014,2.27)をご紹介

  特定非営利活動法人「医療教育研究所」は皆様のご支持のお蔭で開設後既に11年を経過し、今やWeb上に提供する講座はほぼ1000タイトルに達し、これらを常時全国で約1万名の薬剤師さんが受講して毎日生涯研修に励むところまで成長しました。

  そのホームページ中のサイト「遠藤浩良の雑記帳」では、保健・医療・福祉に関する国内外の新しい話題を広くご紹介してきました。その中で小生は、これまで我が国にはワクチンに関する良書が少なかったので、畏友の一人三瀬勝利博士による( 「ワクチンと予防接種の全て」 [ 金原出版 ] ) の出版を歓迎し、強くご推奨したことがあります(なお、本書は改訂版 [ ワクチンと予防接種の全て(改訂第2版): 見直されるその威力 大谷 明、田中 慶司、 三瀬 勝利 (2013/4/9) ] が出ています)。

  その三瀬先生が、”「ワクチン後発国」から脱却するため” (帯封から拝借)に、今度は大先達の山内一也先生と共著で、医学、薬学、生物学の基礎から最新のバイオテクノロジーに至るいろいろな立場で、広くワクチンに関心をお持ちの方々のために、亦また素晴らしい入門書

http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?head=y&isbn=ISBN4-00-006225
ワクチン学
■ 体裁=A5判・並製・カバー・238頁
■ 定価(本体 4,200円 + 税)
■ 2014年2月27日 初版第1刷り
■ ISBN978-4-00-006225-1 C3047

・・・・・ ワクチンは医学史上最高の発明であり,北里柴三郎や野口英世など日本人の貢献も大きい.しかし近年の日本はワクチン後発国とまで呼ばれ,この分野の遅れが目立つ  ワクチン学は今後の医学・薬学・生化学・看護学などに必須の知識であり,本書はその入門書として,ワクチンの開発史,効果と副作用の機序を丁寧に紹介する. ・・・・・ ・・・・・

まえがき
1 古典的ワクチンの時代
 1 ジェンナーの種痘
 2 パスツールの弱毒細菌ワクチン
 3 2つの古典的狂犬病ワクチン
2 近代的ウイルス・ワクチンの時代
 1 ウイルス・ワクチンの近代化をもたらしたウイルス増殖の技術
 2 現在の主なウイルス・ワクチン
3 細菌学の進展と細菌ワクチン
 1 寒天を用いた細菌の純粋培養法の開発と病原細菌学の確立
 2 現在の主な細菌ワクチン
4 新しいワクチン開発
 1 世界規模のウイルス感染症に対するワクチン
 2 一定地域に常在する感染症に対するワクチン
 3 エマージング(新規出現)ウイルスに対するワクチン
 4 主な細菌感染に対するワクチン
 5 感染症以外に対するワクチン
 6 注射に代わる投与法
5 動物用ワクチン
 1 動物用ワクチンの特徴
 2 代表的家畜伝染病ワクチン
 3 人の健康保護のための動物用ワクチン
6 日本における予防接種の現状とワクチン行政の欠陥――米国との比較

を、岩波書店(東京)から出版されました。

  ”入門書” とは言っても、決して気軽に書かれたものではなく、三瀬先生が明快な指導的場から如何に信念を持って執筆された書籍であるかは、掉尾で本書を締めた第6章「日本における予防接種の現状とワクチン行政の欠陥――米国との比較」で、”子宮頸癌ワクチンを例に、予防接種の面で日本が抱えている問題点をまとめてみる。・・・” を読んでいただくとよく分かります。極く一部ですが、以下に抜書きしてみます。

・・・ 日本にはこうしたACIPのようなワクチン行政の基本政策を決定する、透明性の高い組織が存在しない。・・・・・ 厚生労働省に置かれている予防接種の専門家会議が日本版ACIPにあたると強弁する向きもあるが、残念ながらACIPとは似て非なるものである(岩田健太郎:週刊医学界新聞 2009年11月30日号)。第一、子宮頸癌ワクチンが政治主導と社会的キャンペーンの中で定期接種ワクチンに押し込まれたことが、なによりも当該専門家会議の独立性の不在と無力を証明している。この件については大熊由紀子による報告がある(毎日新聞、2013年4月10日朝刊)。ワクチンをめぐる問題に適切に対処するために、日本版ACIPの重要性の認識が広がることを期待したい。・・・・・ 
ワクチンの効果や安全性に関しては、人種差、生活環境、食生活の違いなどが微妙に影響することがあることは常識である。定期接種のような大規模な予防接種の導入に関してはに検討を行う必要がある。少しずつ接種者の人数を増やしながら、有効性と安全性を確認していく作業が必要なのである。・・・・・ 今回の迅速すぎる子宮頸癌ワクチンの定期接種化は遺憾な事態である。・・・・・

  国立予防衛生研究所、国立衛生試験所衛生微生物部長、国立医薬品食品衛生研究所副所長などを経て、現在(独)医薬品医療機器総合機構専門委員を務めるという経歴を持つ三瀬勝利先生の言だけに、ずっしりと重みのある発言である。

  個人購入には少々高価ではありますが、大学、企業、研究所、研究室、あるいは薬剤部、薬局におかれましては、是非とも基本的蔵書の一冊として備えられたらよい本であることを確信を以てお勧めする次第です。

2014/3/28