遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.079
“抗菌”石鹸は本当に必要なのでしょうか?

  皆さんのお宅でお使いの固形洗顔石鹸は何ですか? 抗菌石鹸「ミューズ」赤箱(アース製薬)[ 殺菌剤トリクロカルバン添加 ] とお答えの方が多いのではないですか、何せ固形石鹸売り上げの我が国第3位ですから。我が家も、ワイフが買ってくるのはこれです。
でも、小生がスーパーに行ったとき買うのは、「牛乳石鹸」青箱(牛乳石鹸共進社)です。
こちらは売り上げが第1位(http://www.askul.co.jp/rd/15-0604-0604009-06040090001/ )で、”無添加” が謳い文句です。

  この点に関連して、2013年12月半ば、米国FDAは、論理的で基本的な問いかけをしています。すなわち、

FDA taking closer look at 'antibacterial' soap
http://www.fda.gov/forconsumers/consumerupdates/ucm378393.htm

と、米国内の石鹸製造業者に対して、石鹸を長期間使用した時の安全性に関連して、抗菌 石鹸(antibacterial soap)が普通の石鹸(plain soap)よりも疾病予防や感染防止に有効で あることの証明を義務付けるという厳格な条件を課すとの方針を発表したのです。

  これを伝える報道は”無数”と言っても過言でない位に多く世界中で飛び交っていますし、翻訳した日本語の報道も沢山でていますので、以下には2、3の例示に留めます。

  共同通信社も独自に2013年12月19日ワシントン発で、

抗菌せっけんの規制強化 米当局、データ提出義務

  【ワシントンUPI=共同】手や体を洗うせっけんで「抗菌」が売り物の商品 について、米食品医薬品局(FDA)は16日、安全性を裏付けるデータの提出 を製造業者に義務付ける方針を明らかにした。 ・・・・・ ・・・・・
  FDAの微生物学者コリーン・ロジャーズ氏によると、抗菌せっけんは殺菌剤 トリクロサンやトリクロカルバンなどの化学物質が添加されている。これらの添 加物によって細菌が抗生物質に対し耐性を持つようになるほか、ホルモンに予期 せぬ影響を及ぼす可能性があるとしている。
  同氏は、抗菌せっけんを使うことで、通常のせっけんや水洗いより汚れが落ち ることを示す証拠はなく、利点より弊害の方が大きいと指摘した。

と配信しました。

  ですが、広告スポンサーの製薬会社に遠慮したのでしょうか、国内で契約している地方紙が何処も採り上げて記事にすることがありませんでしたので、我が国では全く話題になりませんでした。

  しかし我が国では、最初に挙げた安価な家庭用の固形石鹸だけでなく、トリクロカルバン添加の高価な液体石鹸(「コラージュフルフル液体石鹸」(持田製薬)など)がもてはやされているのですから、これは本気で議論されて然るべき課題だと思うのですが。

  と言うのは、ご自身が洗面所やお風呂で使った時を考えてみてください、皆さんはこのような石鹸に添加されている抗菌性物質を活性を持ったまま全部家庭排水として廃棄しているのです。ですから、世界中どこでも、こうした化学物質によって河川、湖沼、地下水など環境水が汚染されてしまっているのです。

そうした事実を明かす研究も、調べれば実は国内外で枚挙に暇がない程沢山ありますので、ここではしっかりした我が国の研究を一つだけ挙げておきます。

防菌防カビ剤の河川環境における動態と生態リスクの総合的評価
http://www.kasen.or.jp/seibikikin/h23/pdf/rep1-07.pdf

これは、徳島大学の研究陣が、生態リスクへの懸念が高いトリクロサンやトリクロカルビンなどの防菌防カビ剤で徳島市近隣の河川が汚染されている状況を分析したものです。

48頁に及ぶ長文の報告ですから読むのも大変ですが、大いに参考になりますので是非ご一読をお勧めします。

2014/1/31