遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.078
世界では大製薬企業に対して厳しい制裁続く

  降圧薬の臨床試験データを恣意的に操作して作りあげた誤った効能を販促活動に使った、件の「ディオバン問題」は世界的にも例を見ない製薬業界の大変な不祥事でしたが、日本は鷹揚な国民感情の国なのか、まだ我が国ではノバルティス社にこの不正な宣伝で得た不当な利得の返還を求めるなどといった公的な社会的制裁が下されてはいません。ところが、世界に目を向けますと、欧米では、大製薬企業に対する社会の目は実に厳しいものがあります。その最近の一、二例をご紹介しますので、製薬企業の責任は如何ほどかについてあらためて考えてみましょう。

(1) メルク社がFosamaxによる顎骨壊死に2770万ドルの和解金

  小生は、我が国では医科、歯科の領域でもまだあまり注目されていなかった時代から、ビスホスホネート薬による顎骨壊死の副作用には大いに気を付けなければならないと、本欄のNo.6 ビスホスホネート製剤の副作用もろもろ で警告を発し、その後も
No.19 ビスホスホネート系骨粗鬆症薬による顎骨壊死の副作用は予想以上に多い !
No.40 ”ビスホ薬” による顎骨壊死が ”PTH薬” で治療できる!!
などと、度々関連情報をお伝えしてきました。

  この点に関連する最新情報としては、ロイター社が2013年12月9日付けで、 メルク(Merck)社が、骨粗鬆症薬 Fosamax の副作用で生じた顎骨壊死の訴訟人( No. 06-md-01789. In Re Fosamax Products Liability Litigation, U.S. District Court, Southern District of New York )への和解金 2,770万ドルを用意したと報じています。

http://www.reuters.com/article/2013/12/09/us-merck-fosamax-idUSBRE9B811S20131209 Merck agrees to proposed $27.7 million settlement over Fosamax lawsuits
(Reuters) - Merck & Co Inc said on Monday that it was prepared to pay $27.7 million to settle lawsuits by hundreds of people who sued the company over allegations that its osteoporosis drug Fosamax caused bones in the jaw to deteriorate. ・・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・・

  小生、寡聞にしてまだ知りませんが、日本でも同様な訴訟が起こされたら、この鷹揚な国では一体どうなるのでしょうか?

(2) EU委員会が J & J、Novartis の両社に22億円の制裁金

  EU の独占禁止委員会(Antitrust Commission)は12月10日、米国Johnson &Johnson社とスイスNovartis社に対し、癌の痛み止め Fentanyl の後発薬の販売を遅らせることで両社が合意して価格の維持を図ったことは、EU 競争法(独占禁止法)に違反したものであるとして、約1,600万ユーロ(約22億6000万円)の制裁金を課したと発表しました。以下は同委員会のプレスリリースです。

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-13-1233_en.htm
Antitrust: Commission fines Johnson & Johnson and Novartis € 16 million for delaying market entry of generic pain-killer fentanyl

  欧米では今、以下に例示するように、関連報道がウンザリする位に飛び交っています。

http://www.reuters.com/article/2013/12/09/europe-pharmaceuticals-idUSL6N0JO22U20131209
"Pay-for-delay" generic drug deals fall after EU crackdown

http://www.reuters.com/article/2013/12/10/johnsonjohnson-novartis-idUSL6N0JP35S20131210
EU regulators fine J&J, Novartis for generic drug deal

http://www.fiercepharma.com/story/europeans-hit-jj-novartis-fines-pay-delay-crackdown/2013-12-10
Europeans hit J&J, Novartis with fines in pay-for-delay crackdown

http://www.sify.com/news/eu-fines-johnson-johnson-novartis-22-mn-news-international-nmldOfhbcjb.html
EU fines Johnson & Johnson, Novartis $22 mn

  ところが日本では、メディアが広告大スポンサーである医薬品業界に遠慮しているのでしょうか、以下の2報程度で実に静かなものです。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131211-OYT1T00494.htm
欧州委、独禁法違反で米製薬大手2社に制裁金  読売新聞 2013年12月11日配信

 欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は10日、米製薬大手ジョンソン・ エンド・ジョンソンとスイスの同ノバルティスがEU競争法(独占禁止法)に違反したとして、両社に計約1600万ユーロ(約22億6000万円)の制裁金を科したと発表した。
 欧州委によると、オランダにある両社の子会社は2005年7月、がんの痛み止めなどに使われる「フェンタニル」の後発薬の販売を遅らせることで合意し、 フェンタニルの価格を人為的に維持した。  欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は「両社は、患者が割安な薬を入手できないようにした」と指摘した。(ブリュッセル支局 寺口亮一)

http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304468904579250651718253162.html
欧州委、J&Jとノバルティスに罰金―後発薬販売めぐり

 【ブリュッセル】欧州連合(EU)の反トラスト当局は10日、米ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)とスイスの製薬大手ノバ ルティス(NOVN.VX)に対し、オランダで共謀して鎮痛薬の後発薬上市を遅らせたとして、合計1600万ユーロ(約22億7000万円)の罰金を科した。
 欧州委員会は、両社のオランダ子会社が同国で鎮痛薬「フェンタニル」の後発薬の 販売を行わないとする協定を2005年に結んだとして、J&Jに 1080万ユーロ、ノバル ティスに550万ユーロの罰金を言い渡した。フェンタニルはがん患者に投与される鎮 痛薬で、モルヒネの100倍の鎮痛作用があると言われる。
 欧州委員会のアルムニア委員(競争政策担当)は発表した文書で「これら2社は恐 ろしいことに、がんを患っている人を含むオランダの患者から同薬を安く手に入れる 機会を奪った」と述べた。 ・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・・

  なお、J & J と Novartis の両社は勿論、以下のように、これに反論する構えですが、落としどころはどの辺になるのでしょうか?

http://www.firstwordpharma.com/node/1171252#axzz2oRzA1HzY
J&J and Novartis consider appealing against €16m EU fines

2013/12/26