遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.071
今なお苦々しい 「陣痛誘発薬」「陣痛促進薬」の
不適正な使用!

  ”すべての医薬品には適正な使用が求められる”という原則の典型として、小生が大学で教鞭を摂っていた何十年も昔から、口を酸っぱくして言って来た例に「陣痛誘発薬」、「陣痛促進薬」があります。それが、先日2013年5月7日になっても尚、亦またメディアが一斉に報じる事態が起きています。嘆かわしいことです。

  子宮筋を収縮させる薬は、陣痛が起こっていない妊婦に陣痛を起こすために使用する場合には「陣痛誘発薬」、既に起こっている陣痛を強めるために使用する場合は「陣痛促進薬」と呼ばれ、過去には、医療機関側が都合のよい日時に出産を終わらせるために使用するなどという言語道断な悪例もあり、この薬による事故や使い方に関する問題点については再三にわたって議論され、その度に頻繁に報道もされてきました。ご参考までに関連記事を幾つか以下に例示します。

  この5月初旬の新聞、テレビによる報道の例は以下の如くです。


子宮収縮薬 多くで学会の指針守られず        NHK 2013年5月8日
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130508/k10014416831000.html

 生まれてくるときの何らかの事故で脳性まひになった子どもに補償金を支払う「産科医療補償制度」で、対象となった出産を分析したところ、薬剤で人工的に陣痛を起こしたケースの大半で、薬の使い方や量を定めた学会の指針が守られていなかったことが分かりました。
 産科医療補償制度は、生まれてくるときの何らかの事故で脳性まひになった子どもに、医療機関の過失の有無に関係なく補償金を支払うもので、7日、再発防止策を検討する委員会が対象となった出産の分析結果をまとめ、公表しました。
 この中で、制度の運用が始まった平成21年からの2年間に、子宮収縮薬を使って人工的に陣痛を起こした56例のうち、77%に当たる43例で薬剤の使い方や量を定めた学会の指針が守られていなかったことが分かりました。
 子宮収縮薬の使用が脳性まひの主な原因となったか、影響を与えた疑いがあるとされたのは合わせて7例でした。中には、胎児の心拍数などを把握しないまま薬剤を投与していたケースもあったということです。 また、子宮収縮薬の使用について妊婦や家族から同意を得ていたケースは半数の28例にとどまっていました。
 再発防止委員会の委員長を務める宮崎大学附属病院の池ノ上克病院長は、「明らかになった問題点を医療機関に周知し、これから生まれてくる子どもたちのために産科医療の向上につなげていきたい」と話しています。


脳性まひ3割、出産時に陣痛促進剤 うち8割不適切使用    朝日新聞 5月7日
http://apital.asahi.com/article/news/2013050700013.html

 【辻外記子】出産時の事故で、重い脳性まひになった赤ちゃん188人の3割に陣痛促進剤(子宮収縮薬)が使われ、そのうち8割は、薬の量が基準より多いなど不適切だったことがわかった。脳性まひの赤ちゃんへの医療費を補償する産科医療補償制度を運営する日本医療機能評価機構が7日、報告書を公表した。
 2009、10年に生まれ、補償制度の対象になった188人を分析すると、56人(30%)にお産の陣痛を誘発するための点滴や飲み薬が使われていた。そのうち43人(77%)は、日本産科婦人科学会などが定める診療指針の基準を逸脱していた。使い始めの薬の量や途中の増加量などが基準より多いケースが大半だった。脳性まひとの因果関係が不明、別に理由があるケースも含まれている。
 さらに、薬の必要性とリスクを妊婦らに十分に説明し、同意をとることも求められているが、8人については同意がなかった。カルテの記録が不十分な例もあった。


  以下、読売新聞や毎日新聞でも同様に報じられています。

陣痛促進剤の過剰投与73%…脳性まひ児調査で 読売新聞 2013/5/7
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130507-OYT1T00924.htm?from=ylist

陣痛促進剤:産科医療補償報告書 8割で基準逸脱 毎日新聞 2013年05月07日
http://mainichi.jp/select/news/20130508k0000m040037000c.html

  上記の放送や記事の基になっている 「報告書」とは

再発防止に関する報告書 ― 産科医療補償制度
http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/outline/preventreport.html

でして、その一番下の第3回報告書が2013年5月7日 に公表された最新のものです。

その中の第4章が主要部分で、「子宮収縮薬」については106頁から記述されていますが、その最初の3頁分に概況が書かれていますのでご参照ください。

2013/5/31