遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.056
京大でトマト中に脂質代謝異常改善に有効な成分発見

  これまで、このIT時代は情報洪水と言われながらも、我が国では、欧米で大々的に報道されている最新の科学ニュースでも、飲食品や医薬品といったメディア界における大広告主にとっては不利かなと思われるニュースになると、新聞やテレビの各社は揃ってダンマリを決め込むことが結構多いものですから、日本語報道だけに頼っていると、我々は実は非常に偏った情報しか持ち得ないことを何度かお話してきました。最近の雑談的内容のメール ”ヨーグルトは本当にお腹にいいの?”はその一例でした。

  今号はその逆で、日本人は少々はしゃぎ過ぎではないのかなという例を採りあげてみます。

  京都大学大学院農学研究科食品機能学の河田照雄教授の研究陣は、(財)かずさDNA研究所、(株)日本デルモンテ、千葉県農林総合研究センターとの共同研究で、肥満マウスを用いた動物実験により、トマト中に見出した 13-oxo-ODA (13-oxo-9,11-octadecadienoic acid)が、脂肪肝や高脂血症などの脂質代謝異常の改善に有効であることを、以下の通り、2012年2月10日付けの米国のオンライン科学誌 PLoS ONE に発表しました。

http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0031317 (accessed on 2012/02/17)
Potent PPARα Activator Derived from Tomato Juice, 13-oxo-9,11-Octadecadienoic Acid, Decreases Plasma and Hepatic Triglyceride in Obese Diabetic Mice
  PLoS ONE 7 (2) e31317 (February 2012) Young-il Kim et al.

  京都大学のホームページには、下記のように、日本語で詳しく説明されています。

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/120210_1.htm
トマトから脂肪肝、血中中性脂肪改善に有効な健康成分を発見:効果を肥満マウスで確認

  毎日新聞他はこれを論文発表の当日に速報し、

http://mainichi.jp/life/health/news/20120210k0000e040176000c.html
<トマト>脂肪燃焼を促進する成分 京大グループが発見

その他同日中テレビ各社は定時ニュースで繰り返し紹介していましたが、記録に残る形では下記の程度で、

http://news.mynavi.jp/news/2012/02/10/138/index.html
トマトを食べれば痩せられる!? -京大ら、新発見の成分で肥満改善効果を実証

世の中はまだ結構落ち着いていて、スーパーマーケットの棚にはトマトもトマトジュースも何時もの通りに並んでいました。
  つまり、以前の ”バナナダイエット” の時のように、報道直後に異常事態が起こることにはならなかったのですが、

”・・・ 13-oxo-ODA を肥満マウスの餌に 0.02~0.05%混ぜて4週間飼育すると、血糖値が約2割、血中の中性脂肪濃度が約3割減り、脂肪燃焼の指標となる直腸温も 0.5 度以上 上がっていた。 ・・・”

という動物実験から、いきなり

”・・・ 人間に換算すると、トマトジュースを1日3回、200ミリリットルずつ飲むのに相当する摂取量だ ・・・”

との人間に飛躍する話が伝えられると、案の定その後何日かのうちに世の中は急に興奮し出して、

「トマト」でやせる! 京都大学とデルモンテが肥満に効果的な成分を発見? 肥満防止サプリメント開発につながるか?
http://www.otonano-kaisha.com/news_JBtpvhK9S.html

といった具合の騒然とした空気になってきました。

  そして、数日のうちには遂に、

【トマト人気爆発!?】トマトのやせる成分発見が引き金? 店頭からトマトジュースが消えた!
http://www.otonano-kaisha.com/news_JJZzQysBL.html
トマトジュース売れすぎ・・・脂肪燃焼効果の論文で
http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=26509

という状態になってしまいました。どうも我々日本人は本当に熱し易いのですね。

  それにしても、、この13-oxo-ODA(13-oxo-9,11-octadecadienoic acid)は、京大河田教授等の別な研究報告

http://www.jstage.jst.go.jp/article/bbb/75/8/75_1621/_article
  Biosci. Biotechnol. Biochem. 75 (8) 1621-1624 (2011) 9
  Comparative and stability analysis of 9- and 13-oxo-octadecadienoic acids in various species of tomato

によると、熱安定性も高く、かなり安定な物質のようですので、医薬品にはならないまでも、確かにサプリメントとしては有望でしょうね。落ち着いて、しばらく待つことにしましょう。

2012/02/19