遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.052
骨粗鬆症薬PTH(1-34)の経皮投与パッチ製品の
登場迫って想うこと

 3年ほど前になりましょうか、このサイト「遠藤浩良の薬学雑記帳」に、年寄りの他愛な い昔話として、

No.8 「骨粗鬆症薬としての副甲状腺ホルモンPTH」 今昔譚を書きました。

  これは、小生らが世界で初めて in vitro で実験的に証明し、英国の科学誌NATUREに1980年発表した副甲状腺ホルモンPTHの骨石灰化促進作用が、30年以上経った今、骨粗鬆症薬と言えば長年骨吸収抑制薬が主流であった中で、骨形成促進作用による初の骨粗鬆症治療薬PTH(1-34)の注射剤として臨床応用されるに至ったことについて、感懐を述べたものでした。

  しかし、骨形成作用を持つという意味では理想的な骨粗鬆症薬としてPTH製剤が使えるようになったといっても、これまでの骨粗鬆症薬が主に経口剤であるのに対し、これは痛みを伴う注射という侵襲的方法によるのですから、誰でもあまり好みません。だからといってペプチドのPTH(1-34)はまさか経口投与はできませんから、世界ではいろいろな非侵襲的方法が試みらてきました。

  その成果の一つとして、この程パッチ剤としてPTHを経皮吸収させる製品が現実化したことが、この2011年10月10日に発表されました。そこで、上述のNature誌論文の共同著者であった先生に、亦また感懐を述べるメールを送りましたので、ご参考までに以下に貼り付けます。
  テリパラチド Teriparatide PTH(1-34) については、我が国ではやっと先月末に旭化成(株)の骨粗鬆症薬「テリボン」皮下注射用56.5μgが製造販売承認

http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2011/pdf/me110926.pdf

されたところですが、このテリボンについてもおっつけ非侵襲性の経皮投与パッチ製品が登場という時代がやってくることになりました。

  即ち、2011年10月10日、Zosano Pharma 社(http://www.zosanopharma.com/)は、同社のマイクロ注射技術( ZP Patch Technology http://zosanopharma.com/index.php?option=com_content&task=view&id=117&Itemid=160 )を使ったテリボンの経皮投与パッチ製品( http://zosanopharma.com/index.php?option=com_content&task=view&id=127&Itemid=167 )の日本、韓国、中国、台湾での開発販売権利を 旭化成ファーマ社に付与するライセンス合意を、以下のように発表しました。

http://www.biospace.com/news_story.aspx?StoryID=235894&full=1

Zosano Pharma, Inc. and Asahi Kasei Pharma (AHKSY.PK) Enter Exclusive Licensing Agreement for a Weekly Transdermal Patch Formulation of Teribone(TM) (teriparatide acetate) 10/10/2011 7:26:09 AM

  旭化成ファーマ社も翌10月11日に以下のプレスリリースを発出しました。

http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2011/me111011.html

  Zosano Pharma 社とのライセンス契約について

  旭化成ファーマ株式会社(本社:東京都千代田区 社長:浅野 敏雄)は、ZosanoPharma 社(ゾサノファーマ社 本社:米国カリフォルニア州フレモント、CEO:ゲイルシュルツ)と、Zosano Pharma社が開発した経皮的微小突起薬物送達システムを用いたヒト副甲状腺ホルモン(ヒトPTH)経皮吸収製剤の日本における独占的開発・製造・販売権を、旭化成ファーマが取得するライセンス契約を本年2月に締結しておりましたが、このたび臨床試験に向けた準備が整い、来年には臨床試験を開始できる見込みとなりましたのでお知らせいたします。 ・・・・・・・・・・

  我々がまさにPTH(1-34)を使ってその骨形成(石灰化)促進作用をNature誌に発表した1980年のことを、こんな時代になってあらためて反省を込めて想い起こすと、基礎生物学の応用領域である薬学という分野にいる研究者としては、自身が発見した事実(法則性)の臨床適用という先の先までを見越した勉強をして、もっと自信を持って発言すべきだったのでしょうね。
  如何なる領域でどんな仕事をするにしても、自身の仕事を厳しく評価し、、そして正しく意義づけしないと、他人に対して信念を持って強く主張することは出来ませんよね。

  小生、今や81歳ともなって時すでに遅しなのですが、やっと今になってそれが分かりかけてきたような気がしています。という訳で、この「医療教育研究所」の仕事には、老骨に鞭打ってこれからも更に頑張る所存です。