遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.050
元ラグビー日本代表候補が
第1類育毛剤塗って資格停止2年の処分

  ラグビーの日本代表候補だった山中亮平選手(神戸製鋼)が、今年2011年4月9日の日本代表宮崎合宿で実施された抜き打ちドーピングテストの結果、アナボリックステロイド反応が陽性だった問題で、国際ラグビー機構(IRB)は4月28日に同選手を暫定的資格停止にしました。

  山中選手は、7月に行われた IRB の聴聞会で、確かに口ひげを伸ばすために育毛剤を塗ったが、これに禁止薬物が入っているという認識は全くなく、決して競技力向上のために使用したのではないと主張し、IRB もドーピング目的でなかったことは認めたものの、IRB としては2年間資格停止という所定の処分を軽減する理由はないと結論しました。そして、この8月10日、日本ラグビー協会はこの処分を受け入れることを発表したのです。

  山中選手は、これで2013年4月27日までの2年間は試合に出場できないことになったので、8月9日に退部し、今後は社業に専念して、処分が解ける2年後の復帰を目指すとのことです。

  しかし、これらの報道や発表の中には、塗った育毛剤は何だったのかが明記されていなかったので印象が薄かったせいでしょうか、私のかかりつけ薬局の薬剤師さんですら全くこのことをご存じありませんでした。自分の薬局でも、この事件のもとになった一般用医薬品第1類の「ミクロゲンパスタ」をちゃんと売っているのにです。

  この薬を「ミクロゲンパスタ」と名指ししたのは、以下の日刊スポーツ

http://www.nikkansports.com/sports/news/f-sp-tp0-20110810-818348.html

だけだったようですが、報道や発表は大方の注意を喚起するのが目的ですから、やはりはっきりと使用薬品名は書くべきだったのではないでしょうか。

  そうすれば、「ミクロゲンパスタ」の添付文書やパンフレットには、ちゃんと ”二種のテストステロン(男性ホルモン)を主成分とした吸収されやすいクリーム状の外用育毛剤” と明記されているのですから、いくら山中選手に同情するにしても、とても ”うっかりドーピング” などと言えることではないことがわかります。

  と同時に、”口ひげを生やす目的で、理髪店で薦められた塗り薬を1月に薬局で購入して使用”(http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2011081000774)したのならば、薬には素人である理髪店主を責めるのは酷であって、対面販売に当たって情報提供を十分に行わなかった薬局薬剤師の責任は大きいと思います。

  山中選手は、大阪・東海大仰星高、早大で活躍後今春神戸製鋼入りした、187cm、95kgの恵まれた体格

http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2011/08/11/kiji/K20110811001389380.html

なので、販売に当たって ”ご立派なお体をしていらっしゃいますが、何かスポーツをされてはいませんか?” と一言尋ねさえしたら、すぐにお客さんは日本代表のラガーマンとわかったでしょうから、そしたら会話はドーピングに及び、名指しの薬を販売するどころか、むしろそれを使用しないようアドヴァイスすることになったに違いないと考えるからです。

  ちなみに、「知っておきたいアンチ・ドーピングの知識 2011年版」(社団法人 日本 学生陸上競技連盟)(http://www.iuau.jp/news/2010/anti-doping2011.pdf)第8頁には、

8. 発毛剤について
2008年まで禁止物質だったフィナステリドは、2009年から禁止物質ではなくなりましたので、フィナステリドを含むため禁止されていた内服薬の発毛剤に関しては、2009年から大丈夫になりました。
ただし、発毛剤のぬり薬の中には禁止物質のテストステロンを含むものがあり(例:商品名「ミクロゲン・パスタ」、啓芳堂製薬)、このようなぬり薬は引き続き使用してはいけません。

と明記されています。

  薬剤師とドーピング防止活動の関係については、この薬剤師生涯研修コンテンツの中でも既に何回かとりあげておりますが、今後更に内容の充実を図って参りますのでご期待ください。