遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.045
1型糖尿病男子の治療に光明、精巣の幹細胞から膵島β細胞

  ”ロシアでの1型糖尿病患者移植用ブタ膵島封入カプセルの販売承認”に関する前号の記事に関して、今でもよく勉強する教え子の薬剤師から、

・・・ 現在は皮膚・軟骨などの自己細胞培養で移植するというのが普通におこなわれるようになって ・・・また実験レベルですが膵臓や肝臓といった臓器そのものを幹細胞から作り出すことも出来るようになって ・・・ これらの技術が進歩して人に応用されるのはいつ頃と遠藤先生お考えですか? ・・・

とのレスポンスがありました。ちょっと難しいですが、”・・ 意外に早く、数年先の小生が米寿の頃には実現しているかもしれませんね。 ・・” と答えました。

  というのは、この前の記事でもお話した1型糖尿病治療に関連して、米国ワシントンDCにあるジョージタウン大学メディカルセンター・細胞生物学部門のG.I..Gallicano准教授率いる研究陣が、以下の大学ホームページ・ニュースリリース欄にあるように、ヒト精巣の精祖細胞(spermatogonial cell)から幹細胞を作り出し、今有名なiPS細胞の場合のように がん遺伝子を導入する操作なしで、ヒトインスリン産生細胞(SSC :human spermatogonial stem cell )を作ることに成功し、昨2010年の12月12日、フィラデルフィアで開催されたアメリカ細胞生物学会第50年会で発表したからです。

“Grow Your Own Transplant” May be Possible for Men with Type 1 Diabetes
http://explore.georgetown.edu/news/?ID=54742&PageTemplateID=295

  これは、ヒト精巣から作りだしたSSC細胞を免疫系を持たない糖尿病マウスに移植したところ、マウスの高血糖症状が改善されたという、まだまだ実験段階の報告であるとはいえ、今後は1型糖尿病患者の治療への応用が十分に期待できる結果です。つまり、1型糖尿病患者も、自分の精巣からSSC細胞を作って移植すれば、通例の移植療法の場合のように免疫抑制薬を全く用いることなく、糖尿病の治療ができることになるわけですから。

  それで、以下に例示するように、欧米では早速に多くのメディアが大々的に報じています。

  しかし、以下のように、残念ながら我が国では、ほんの僅かだけ、しかも必ずしも完全な翻訳とはいえない報道があるだけのようです。

 それにしても、今度は卵巣についても同様な実験を早くする必要がありますね。男性の1型糖尿病を治す研究だけでは何とも不公平な話で、女性患者も救う必要があるわけですから。