遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.041
”緊急避妊薬”について承認審議前に異例のパブコメ募集!

  先日2010年11月10日に小生は、最新の厚労省によるパブコメ募集について、薬剤師仲間に以下のメールを発信しました。


  いよいよ日本でも経口緊急避妊薬 「ノルレボ錠0.75mg」(製造 (株)そーせい、発売 あすか製薬(株)、販売 武田薬工(株)による1錠中にレボノルゲストレル levonorgestrel 0.75mgを含む錠剤)が発売に向かっています。

  社会環境的な問題として大きな影響が考えられるからでしょうか、薬事・食品衛生審議会の審議に先だって幅広い意見を求めるという厚労省としては全く異例の措置で、本日11月10日付けで厚生労働省医薬食品局審査管理課からパブリックコメントの募集が開始されました。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495100233&Mode=0
「ノルレボ錠0.75mg」の医薬品製造販売承認について (公示2010年11月10日、意見・情報受付締切 2010年12月09日)

  このサイトで、「添付文書案」をクリックすると、『緊急避妊剤 処方せん医薬品 ノルレボ錠 0.75mg』 の添付文書(案)が出てきます。そこでは、効能効果は「緊急避妊」で、用法用量は「性交後72時間以内にノボノルゲストレルとして1.5mgを1回経口投与する」となっています。

  緊急避妊を目的としたこの種の製剤が承認されたのは、1999年のフランスが初めですが、以来現在ではヨーロッパ、アジア、アフリカ等の45ヵ国で販売されています。なお、米国では一般用医薬品(=PlanB)として販売され、またEU を中心とする約30 ヵ国でも医師の処方を必要としない一般用医薬品として販売されています。

  こうした諸外国の動向からすると、やはり日本の薬剤師、特に薬局薬剤師にとっても、今や”緊急避妊”に対して適正な情報を的確に提供できる態勢を整えなければならない時代が到来したのかと、小生のような老薬剤師にとっては複雑な想いです。

  となると、皆さんは今

・・・・・ このお薬は、普通の避妊薬のように妊娠を避けるために計画的に飲むものではなく、コンドームを使わなかったり、普通の(低用量の)経口避妊薬を飲み忘れたりした時などのように、避妊の措置が十分でなかった場合、性交後に飲む緊急用の避妊薬です ・・

ということを、来局した若いお嬢さんや奥様に上手く説明できるようになっているのでしょうか?

「くすりの適正使用協議会」の最近の調査

http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/39874/Default.aspx
薬剤師による薬の説明定着 複数医療機関からの処方チェックに課題

によれば、”・・医薬分業の広がりで、薬剤師による説明が定着しつつある・・”というのですが、年寄り薬剤師の小生にとっては、これこそ ”ファーマシューティカル・コミュニケーション” の最も難しい局面で、”薬剤師による薬の説明が定着” などとはおよそ程遠いところにあるような気がするのですが。
  このメールを受信して早速に、日本で薬剤師になってからアメリカで更に勉強して Pharm D の資格を取り、現在はフロリダのドラッグストアで主任として働いておられる女性薬剤師さんが、事の良し悪しは別にして、この点では先進国であるアメリカの現状を伝える長文のメールを下さいましたので、ご参考までに抜粋して以下に貼り付けます。

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       ・・・・・ 審議の対象となっている「ノルレボ錠0.75mg」は、米国ではすでに、同主成分である「プランB錠0.75mg」が、17歳以上の患者には OTC薬 として、16歳以下の患者には処方せん薬として市販されています。 ・・・・・ 勤務先の薬局では1週間に平均1、2箱が売れています。購入者が17歳以上であることを確認するため、購入する際に写真付きの身分証明書の提示を要求しています。購人する人たちの大半は20代の女性ですが、30代、40代のご夫婦がそろって来られることもあります。発売元のテレビコマーシャルや雑誌の折り込み記事などで、本剤が、「緊急避妊薬」であるという認識は、広く一般に受け入れられているようです。 ・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・
  日本での本剤承認への大きな懸念の一つには、本剤が未成年者のセックスを助長するのではないか、という議論でしょう。しかし、米国の現状をみると、未成年者のセックスは、本剤のみに影響されるようなものではありません。15歳、16歳の一般的な家庭で育ち、高校に進学しているような未成年女性による妊娠は珍しくないのです。 ・・・ 活発な議論をしていくべき点は、本剤のアベイラビリティーよりも、医療従事者、教育者、保護責任者が正しい情報を把握し、適切な家族計画を未成年者ができるようにする支援システムだと思います。

  ところで米国において、最近、・・・ テレビ ・・・ で、「16歳で妊娠」という人気番組が放映されています。 ・・・ 赤ちゃんの両親となった16歳のカップルが、自分たちで住む場所も確保できず、それぞれの両親のもとで世話になっている姿、学校生活と両立できず、また就職にも困窮している姿を、本人たちの言葉で紹介しています。 ・・・・・・・・・・ 米国ではプランBという薬があり、望まない妊娠を回避することができるという情報と手段があるにも関わらず、未成年者の妊娠が増加しています。 ・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・

  ・・・ 発売するかどうか、という議論はもちろんですが、それにも増して患者が本剤について正しく理解し、適切に使用するために、彼らが始めにコンタクトをとると考えられる医療従事者、なかでも医師/薬剤師に十分な情報提供 ・・を行い、プライバシーの配慮から通話料無料の電話相談窓口をもうけ、患者からの質問にいつでも回答できるサポートシステムの配備が必要でしょう。それらが整ってはじめて、本剤が、若者だけでなく、30代、40代の母親となる女性が、自らの人生設計/家族計画を真摯に考え、実行する手段となると思います。

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  前例のないことはなかなかやりたがらないお役所である厚労省が、今回は折角異例の審査に先立つパブコメ募集をしてくれているのですから、その積極的姿勢に応えて、最も妥当な供給体制が組まれるように、是非とも皆さんが智恵をしぼって活発に意見を具申されては如何ですか。 まだ間に合いますよ。