遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.040
”ビスホ薬” による顎骨壊死が ”PTH薬” で治療できる!!

  若い方々には迷惑な年寄りの悪い癖とは思いながらも、これまでついついくどく繰り返して来ました ”ビスホスホネート薬による顎骨壊死の副作用” と、小生が 1980年 に Nature 誌上に発表した萌芽的研究( cf.「骨粗鬆症薬としての副甲状腺ホルモン」 今昔譚 http://www.ime.or.jp/zakki/zakki_08.html )の故に特に想い入れが深い ”骨形成促進を作用機序とする唯一の骨粗鬆症薬PTH(1-34)” とが、以下の通り、この 2010年10月16日 付けで世界一流の米国の臨床医学雑誌 New Eng J Med オンライン版に発表された、(1)および(2)の論文で見事につながり、(3)の同誌論評欄で詳しく解説されています。

(1) http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1005361
Teriparatide and Osseous Regeneration in the Oral Cavity
cf. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1005361

(2) http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMc1002684
Teriparatide Therapy for Alendronate-Associated Osteonecrosis of the Jaw

(3) 上記2篇についての論説 Editorial :
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMe1010459
Teriparatide for Bone Loss in the Jaw

  つまり、これまで治療法がないと言われていたビスホスホネート薬の副作用で惹き起こされる顎骨壊死も、骨同化作用がある初の骨粗鬆症薬 PTH(1-34)によって治せることが確認されたというのです。 (2)の ”Coresspondence” 欄には、一例報告ですが、治療前と治療後の写真がシッカリと載っています。

※ ただ、何時も思うことですが、プラセボで治らなかった患者さんは可哀そうですね。ちなみに、このような骨粗鬆症薬の臨床試験におけるプラセボの倫理的問題については、別にやはり New Eng J Med 誌上で今ホットな論争が行われています。

http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMsb1002227
Placebo-Controlled Trials in Osteoporosis .
- Proceeding with Caution

  したがって、当然の如く、以下に極く一部を例示しますが、外国メディアは一斉に早速このPTH薬の効用について報道しています。

  この原稿を執筆している時点では、日本ではまだ一般紙誌の報道は見られませんで、ただ我が国でも勉強家のお医者さんはいらっしゃいますから、

http://ameblo.jp/erikki-chann/ 「NEJM abstract 歯周炎の治療」

のように、個人的ブログでこれを紹介している例が僅かに見られるだけです。

  その後、医療ニュースのサイトでは、10月20日付けで、

「重度歯周炎へのテリパラチド、歯根膜手術後の歯槽骨再生を促進」
http://www.m3.com/open/thesis/article/10791/

というささやかで目立たない報道が一つあるだけかと思います。

  我が国における科学報道の貧困さがここにも見られるようで、誠に残念なことです。