遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.037
変形性腰椎症の慢性腰痛にグルコサミン投与は効かない !

  ”グルコサミンは軟骨の損傷を修復し抗炎症作用を発揮する”として、市場にはグルコサミン含有の健康食品が氾濫しています。でも、その効果に関しては賛否こもごもです。

そんな中、2010年7月7日付けアメリカ医師会雑誌JAMA( The Journal of the Amercan Medical Association ) に、ノルウェーのオスロ大学病院整形外科のカイロプラクティス・マスター (MChiro)Philip Wilkenns 氏らは、以下の通り、グルコサミンの服用は変形性腰椎症の疼痛関連障害に対して改善効果をもたらさなかったと報告しました。

Effect of Glucosamine on Pain-Related Disability in Patients With Chronic Low Back Pain and Degenerative Lumbar Osteoarthritis : A Randomized Conrolled Trial JAMA. 2010;304(1):45-52.
抄録: http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/304/1/45

すなわち、同病院の外来で、問診やMRI検査などにより、6か月を超えて慢性腰痛が続き、変形性関節症ありと診断された25歳以上の患者250名を2群に分け、それぞれ1,500mg/day のグルコサミン(日本の健康食品も、推奨摂取量はほぼこの程度だと思います)あるいはプラセボを投与する二重盲検試験で、投与開始から6カ月、1年の時点で評価したところ、疼痛評価スコアで両群間に有意の差が認められなかったというのです。

欧米では早速に、Web上の健康関連サイトや報道機関が、”枚挙にいとまがない” と言うのはこんなことかという位に、何処でもこの論文を紹介しています。例えば、ほんの数例を挙げれば、以下の如くです。

しかしながら、一体どうしたことでしょう、グルコサミン含有健康食品は新聞広告やテレビCMで大のお得意様ですから、科学部は報道したくても、営業部の意見で結局は遠慮せざるを得なくなるのでしょうか、日本では一般紙誌でも啓蒙科学紙誌でも、この論文は全くと言っていい位に紹介されていないように思います。

今のところWeb 上で気が付いたのは、論文発表直後では

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1007/1007025.html
グルコサミンは変形性腰椎症の疼痛関連障害を改善しない
ノルウェーのRCTから          2010年7月7日

だけで、その後ほぼ半月もたった7月20日になって

http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=15531
変形性腰椎症を伴う慢性腰痛へのグルコサミン投与、痛みの日常生活への影響を改善せず

が、さらにまた1週間も経ってから、7月27日にようやく

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/jama/201007/516144.html
変形性腰椎症の腰痛患者にグルコサミンは効果なし
初の大規模無作為化試験の結果

が報じられた程度で、影響力の大きい一般紙は完全に沈黙を守ったままです。

でも、勉強家のドクターは居らっしゃいますから、お医者さんの個人的なブログでは早くから、例えば

などと解説されていますので、こちらもご参照下さい。

といった具合でして、我が国では”情報洪水”と言われて久しく、世界の情報が街中に溢れているかのように見えるにもかかわらず、実は一般市民は非常に偏った一方的な情報しか与えられていないのが実情です。

それ故、我々薬剤師はこの点をよく心得て、積極的に自ら情報の収集に努める姿勢を持たないと、市民の健康コンサルタントとして真っ当に役割を果たせないことになってしまいます。心しなければなりませんね。