遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.036
糖尿病治療の最前線 ― 膵島移植について

  糖尿病の治療に関連して、前号では、現在進行中のインスリンの非侵襲的投与法の開発についてお話しましたが、実は横浜市大の授業に際しては、その話の後に、同じインスリンを供給するにしても、”薬物療法” として補給するのではなく、”移植” という医療技術 で遥かに生理的に近い状態でインスリンを供給しようとする努力についても 、[参考] として述べました。

  ご参考までに、学生さんに配布したプリントの一部を以下に貼り付けます。


    [参考] (6)膵”島”移植 (膵”臓”移植ではなくて!)
  • http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200606/500731.html
    ”膵島移植でインスリン離脱 1型糖尿病患者の全12例で好成績”
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     点滴によって“輸血感覚”で移植でき、合併症が非常に少なく、万が一、生着しなかった場合も、再摘出の必要がない ・・・。このような、従来の移植のイメージを覆す低侵襲性で注目されているのが、1型糖尿病患者に対する膵島移植だ。

      2004年4月に京大で国内第1例目の移植が行われて以来、今年3月までに、神戸大、国立病院機構千葉東病院を含む3施設で、計12例に実施された。その全例で血糖コントロールが良好となり、低血糖発作が回避されるなど、成績は上々だ。

      膵島移植は、従来の膵臓移植とは異なり、ドナーの膵臓からインスリンを分泌する膵島細胞だけを分離し、レシピエントの肝臓門脈に点滴注入する移植法だ。
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  • http://www.somos.co.jp/solution/d/031.html
    ”膵島移植、あの感激から1年 [Edmonton Protocol]”

     ・・・ (膵臓移植は)日本では僅か十数例ですが、世界ではアメリカを主として10,000例はあるとされます。もっと理想的なのはインスリンを分泌する膵島(ランゲルハンス島)だけを移植することです。それならば機能しなくなっても摘出のための再手術が要りません。
     その『夢』の膵島移植が成功したというニュースがカナダから届いたのが1年前。移植を受けた15人はどうなっているでしょうか?

     エドモントン(カナダ)にあるアルバータ大学が中心になって開発した膵島移植はとても独創的な発想や技術が随所にあります。そこでこの方法は『エドモントン・プロトコール』と呼ばれるようになりました。プロトコールとは約束事のことです。
    あの感激から1年後、膵島移植を受けた15人のうち、3人はインスリン注射が必要になりましたが、それでもインスリン量は移植前の1/5で済むそうです。
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  授業が終わると、学生さんには出席確認のために「受講感想カード」を提出してもらいますが、カードを読むと、講義の付け足しの単なる「参考」だったのに、これが予想外の好評でしたので、更に翌週の講義プリントの頭には以下の追加をしました。これもご参考までに貼り付けます。

[補遺] ”カプセル封入したブタの膵細胞移植が1型糖尿病に有望”
http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=14285

原文:http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/news/fullstory_98469.html

参考:
(1) DIABECELL :
http://www.lctglobal.com/lct-diabecell-diabetes-treatment.php
※ 上記の技術を開発したニュージーランドの会社のホームページでの製品説明

(2) Islet transplantation :
http://www.diabetes.org/living-with-diabetes/treatment-and-care/transplantation/islet-tranplantation.html
※ 膵島移植の一般的な説明

(3) My new islets :
http://kathy-mynewislets.blogspot.com/
※ このカプセル封入ブタ膵臓ラ氏島β細胞の移植でインスリン注射が要らなくなった1型糖尿病患者の患者さんで、アメリカ・オハイオにお住まいになりながら今3人のお子さんを育てておられる、若い25歳の medical technologist のお母さん、ブログに感激的な感想をしたためている。


  ブタの細胞も、カプセル内に封じ込められているので、ヒトの免疫機構も異種動物のものとは認識できないため、拒絶されることはなく、更にそこから分泌されるブタインスリンは、B鎖のカルボキシ末端のアミノ酸1つが違うだけと、構造がヒトインスリンに酷似しているため免疫原性は極めて低いのですから、ヒト膵ラ氏島β細胞の供給が極く限られている実情からすると、この技術は1型糖尿病の患者さんにとっては実に素晴らしい福音ですね。

  これらの情報は、皆さんの業務に直接的に役立つわけではありませんが、疾病の治療には薬物療法だけが万能ではないという実例はいろいろあり、このように糖尿病もその例外でないという事実は薬剤師も十分に心得ていなければならないと思いましてお話し致しました。