遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.034
新刊書籍紹介 ― 傘寿の身の近況報告を兼ねて ―

  小生、2010年度に入ったところで、また今年も、4月12日(月)から、横浜市立大学国際総合科学部環境生命コースの「創薬科学」の講義が始まりました。前期終了の7月末までは、毎週月曜は外勤です。

  この学部学科名では一体何を学ぶところなのかさっぱり分からず、この授業科目の目的も分かりません。大学に聞いてみましたら、昔流に言うと「理学部生物学科」だそうで、学生、院生の ”就活” 対象には製薬企業もあるために新たに設けた授業科目だそうですから、薬学の側から見たら小生は今 ”敵に塩を送っている” ことになります。でも、薬を正しく理解する大学生が増えることは国民にとって結構なことですから、老骨に鞭打って頑張ろうと思います。

  横浜市大の所在地は拙宅の住所地と同じ神奈川県内なのですが、同大の金沢八景キャンパスまで片道2時間以上かかり、授業前にプリント印刷の時間もあるので、10時半から正午まで第2時限1コマの僅か90分の講義なのですが、朝は通勤通学ラッシュに揉まれて出掛け、講義終了後ゆっくりと昼食を済ませてから帰宅すると、大袈裟に言えばほぼ1日がかりの大仕事になってしまいます。

  それでいて、大学の非常勤講師というのは、国公私立を問わず大学間でカルテルを結んでいるのではないかと勘繰りたくなる位にどこでも安給料でして、横浜市大も例外ではありません。ですから、収入の面から言ったら全く割に合いません。

  それでも、今日行ってみましたら、授業開始の10分も前に入った小教室は真面目な60名程の学生さんで既にもう一杯で、少しお歳の外国人留学生一人を除けば、全員が3年生中心の二十歳前後で、しかも女子学生が半分以上ときていますから、早や傘寿ともなった小生にとってこれ以上に若返りの妙薬はありません。ですから、まあ安給料も我慢というよりか、いや実は、それ以上に結構楽しい想いをさせてもらって感謝しております。

  それ故、学生さんに ”毎年同じなんだろう” なんて言われないように講義プリントは年度ごとに改訂しますが、今年の第1回総論の授業では、つい先日の2010年1月20日に発行された

「医薬品クライシス――78兆円市場の激震」
佐藤健太郎 著 (株)新潮社 [新潮新書 348] 、207頁 ¥700
http://www.shinchosha.co.jp/book/610348/

書評:http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/02/78-6e7c.html

書名「医薬品クライシス 78兆円市場の激震」は刺激的だ。78兆円規模の医薬品市場に激震が走るというのである。いつか。2010年、つまり、今年だ。帯に大書されているフレーズ、「2010年、もう新薬は生まれない」が象徴的だ。

帯ではまた「崇高な使命、熾烈な開発競争、飛び交う大金、去っていく研究者」として激震が語られている。だが単に危機を煽った書籍ではないことは、著者佐藤健太郎氏が二年前まで現役の熟練創薬研究者であり、この数年の動向を踏まえていることからわかる。

 ・・・・・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・・・

本書は、医薬品市場と創薬の現場について焦点を置いているものの、一般の読者にとって興味深いのは、創薬とはなにかという解説だろう。化学者はどのように医薬品を創造するのか。また、創薬の世界にも流行があるといった話は、普通に科学に関心をもつ市民にとっても知的に興味深いところだろう。

むしろ、書籍としては医薬品市場や創薬の話というより、またクライシスという危機についてよりも、現代の医薬品を総括的にわかりやすく語った点で広い読者層に読まれるべきだろう。ふんだんに散りばめられた各種のエピソードも興味深い。 ・・・・・ 社内でボツになりかけたハルナールの話などは、もっと知られてよいようにも思えた。

という新刊書籍もちゃんと採り入れた改訂版を配布しました。

  この本はなかなか良く書けていますので、薬剤師の皆さんにも教養書としてご推薦させていただきます。