遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.029
小児喘息増加の原因は母親に?
妊娠中に過剰摂取した葉酸サプリが原因か!?

  小児で最も気をつけたい病気の一つに喘息があり、重度の場合には呼吸困難となってチアノーゼを起こしたりするこの小児喘息は、今や年々増加しています。

  その理由としては、周囲の社会環境の変化、あるいは子供を含めた我々の生活習慣や食生活の変化など、子供が誕生後にさらされる事象に原因を求めるのが一般的です。

  ところが、以下のとおり、全く思わぬところに原因があったのかもしれないことを強く示唆する標記題名の内容の研究が、オーストラリアのアデレード大学の研究陣により、アメリカ疫学雑誌に発表されましたのでご紹介します。

  すなわち、オーストラリアで557人を対象とし、妊娠初期(16週まで)と妊娠後期(30~34週)における食品あるいはサプリメントによる葉酸の摂取状況と、誕生した子供の3.5歳時点における喘息発症リスクの関係を調べたのです。

  その結果、葉酸を積極的には摂取しなかった母親から生まれた子供に比べ、妊娠後期にサプリメントの形で葉酸を摂取していた母親から生まれた子供では26%、また妊娠前期から後期まで全期を通じて摂取取していた場合は32%、そのリスクが推計学的に有意に高かったのです。

  ところが、同じく葉酸を積極的に摂取(100μg/日)するにしても、通常の食品の形で摂った場合には、喘息リスクの増加は3.5歳時点では9%に留まり、また5.5歳時点では17%リスクが高まったものの、いずれも統計学的有意差ではありませんでした。

  つまり、食品として葉酸を摂取するのなら、胎児の神経管奇形を予防できる上に、後の小児喘息をそう心配しなくてもよいけれども、妊娠後期にサプリメントの形で葉酸を摂取すると、後になって子供に小児喘息を惹き起すリスクが明らかに高くなったので、オーストラリアでも近年喘息の子供が増えているのは、もしかすると母親が妊娠全期間を通じて葉酸サプリメントを摂取していることが原因かもしれないというのです。

  オーストラリアでの研究だからでしょうか、早速にこれを伝える報道は英連邦諸国で多いようですが、もちろん世界中の他の国々でもこのニュースは伝えられていますので、挙げていったらとても切りがありありません。

  そこで、以下には、”特に妊娠後期の葉酸摂取が危ない” ことを意識して表題が付けられたニュースだけを拾って、その幾つかを例示してみましょう。

  さて日本でも、胎児の神経管奇形の予防のために妊娠中の葉酸摂取が強く推奨されているのは皆さん既にご存じのとおりですが、特に胎児の器官形成期である妊娠初期の4週から7週に掛けての摂取が大事なのである

妊娠したいネット  妊婦と葉酸
http://www.prepremama.net/yohsan/yohsan2.html

ことが、これ程までにはっきりと意識されているでしょうか?

  妊娠されているご婦人のお客さんにただ漫然と葉酸の摂取を奨めているのでは、決して立派な街のヘルスコンサルタントたる薬剤師とは言えないことになりますね。皆さんも、この辺をあらためてよく考えて健康指導に当たって下さい。そうしたら、”さすが薬剤師さん!!”と益々信用を博するでしょう。