遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.020
改正薬事法による”医薬品ネット販売禁止”に
関連する医薬行政当局と医薬品業界の最新動向

  これまで認めてきた ”風邪薬や漢方薬など700種類以上のインターネット販売を含む一般用医薬品の通信販売”をこれからは禁止することとする「改正薬事法施行規則等の一部を改正する省令」が、官報

http://kanpou.npb.go.jp/ [ のうち 平成21年2月6日付(号外 第23号)]

で告示され、同時にこれに対し求めていたパブリックコメントの結果

パブリックコメント(結果公示案件一覧) 2009年2月6日 495080137
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?ANKEN_TYPE=3&OBJCD=100495

「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に関する意見の募集結果(95頁にわたる 3,430件の意見)が公表されました。

  このうち、上述の「郵便その他の方法による医薬品の販売等」の問題に関しては、何と2,353件もの意見(p.38-59)が寄せられ、これに回答する形で、厚労省は ”医薬品安全性確保のための対面販売 の必要性” の考え方を詳細に示しました。”パブコメ”をうまく使ったものと感心すると同時に、実はこれでは一体”パブコメ”とは何なのかとの感も否めませんでした。

  なお、告示された改正省令全般にわたっては、小嶋慎二氏の詳細な解説が

アポネットR研究会 最近の話題  2009.02.06 付け
http://www.watarase.ne.jp/aponet/news/090205.html

にありますので、こちらもご参照下さい。

  しかしながら、兎に角これでは、伝統的に認められてきた通信販売までが禁止されるので、山間僻地や離島の住民など大いに困惑する人が出ることは確かですから、この改正省令の告示後に早速に、舛添厚労相は閣議後の記者会見で、「・・・ 薬局や店舗に行くのが困難な方への対応策、ネットなどを通した販売のあり方について、結論を何時までに出すかは決めていないが、検討会で幅広い議論をしてもらう ・・・」と述べました。

  これを受けて、10日後の2月16日に厚労省は、この告示内容を一部修正することにもなり得る「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の第1回会合を平成21年2月24日午前にに開催する旨を公示しました。

第1回医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会の開催について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/s0224-1.html

  これによると、議題は、一括してネット販売の可否を論じるのではなく、(1)薬局・店舗等では医薬品の購入が困難な場合の対応方策、および (2) インターネット等を通じた医薬品販売の在り方 の二つに分けて示されています。

  厚労省としては(1)で離島や僻地における医薬品購入などの例外的各論の部分では省令に反対する立場との妥協を図りつつも、(2)では総論としての既定方針をあくまで堅持するという戦術をとるのかと推察されます。

  その上、今度の検討会

【舛添厚労相】「新制度」円滑施行で検討会‐ネット販売のあり方など審議
http://www.yakuji.co.jp/entry9133.html

のメンバーには、従来どおりの医薬品ネット販売継続を強く主張する三木谷浩史(楽天代表取締役会長兼社長)、後藤玄利(日本オンラインドラッグ協会理事長)および綾部隆一(全国伝統薬連絡協議会)を新たに加えてはいるもものの、省令内容を決めた旧検討会の委員はそのままなので、総勢19名の委員構成の中で新省令に対する反対派はあくまで少数派です。

  したがって、後藤および三木谷の両氏は、会議開催に当り舛添要一厚労相に対して、委員構成や議題設定などに異を唱える「要望書」

医薬品販売の検討会、楽天三木谷会長らが舛添大臣に要望書
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/02/20/22524.html

「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」開始に当っての要望
http://www.online-drug.jp/img/20090220youbou.pdf

を早速に提出しました。

  以上の通り、会議前から既に前哨戦が始まり、当日の会議は白熱したものとなりそうでしたので、小生は上記検討会の傍聴に行って参りました。

  何せ省令公布直後に所管の厚労相自身がその内容を変更し兼ねない直属の検討会を発足させたという全く異例な会合の第1回ですから、メディアには絶好のネタで新聞、テレビ他各社が一斉に報じていますが、中でも当日の会場の熱気をまあ多少は伝えているかと思われるもの二、三を以下にご紹介します。

  しかし、これらの中には伝えられていないことで薬剤師である小生がビックリ仰天したのは、日本薬剤師会会長たる児玉孝委員が説明のために提出した資料の記載内容です。一部を抜書きしますと、

1.障害者、高齢者 ・・・ など ・・・ 薬局や店舗に自ら買いに行けない人に対する供給方法
(方法の1) ○ 配置販売業者を通じて、必要な医薬品を居宅に配置する。
 ・・・・・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・・・
2.居住地の近くに薬局・店舗がない人に対する供給方法
○ 上記1の「方法の1」のように、配置販売業者を通じて、必要な医薬品を居宅に配置する。

  なるほど「改正薬事法の下で一般用医薬品供給の確保対策について」と題する1枚の資料を共同で提出した9団体の筆頭は確かに日本薬剤師会で、連名団体の中には「全国配置家庭薬協会」と「日本置き薬協会」が入ってはいます。

  しかし、検討会委員の中に両団体夫々の代表が入っているのに、そちらからではなくて、日本薬剤師会会長がこれを麗々しく説明するのはどうにも納得がいきません。

  日本薬剤師会としては、上記のような方から依頼があった場合は、「注文の医薬品を出来る限り速やかに当該地域薬剤師会傘下の薬局から薬剤師がお宅に配達するシステムを構築します」とでも宣言するのならわかりますが。

  上記のメディアの報道にも一部書かれていますが、医薬品ネット販売の継続を主張する楽天社長が激高するのも無理ないかなというのが傍聴の実感でした。