遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.019
ビスホスホネート系骨粗鬆症薬による
顎骨壊死の副作用は予想以上に多い !

  小生は、現役時代に ”骨の器官培養による骨形成および骨吸収のホルモン調節機序の解明” という基礎研究ををしておりましたが、これは骨粗鬆症治療薬の開発や評価につながる研究でもあった関係で、後期高齢者なんていう有り難くもない名前を冠せられることとなった今でも、骨粗鬆症薬には一家言のある人間です。

  それ故、高等動物の体内には全く存在しない ”-P-C-P-” という原子間結合を持つ化学物質であるという意味で、典型的な ”生体異物” に他ならないビスホスホネート系骨粗鬆症薬に必然的につきまとう副作用、特に未だに発症機序が不明な ”顎骨壊死” については、ずっと以前から製薬業界、医薬行政当局、医薬関連学界に強く警告を発してきました。

  この点に関連して、今年の元日にアメリカ歯科医師会誌(JADA :Journal of American Dental Association)に発表された標記の内容の論文が欧米で華々しく報道されていますのでご紹介します。

○原著論文:Oral bisphosphonate use and the prevalence of osteonecrosis of the jaw :An institutional inquiry
  J Am Dent Assoc, Vol 140, No 1, 61-66. ( 2009)

i ) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19119168
ii ) http://jada.ada.org/cgi/content/abstract/140/1/61
iii ) 全文(図表を除く)
http://www.hivdent.org/_DentalTreatment_/2009/DT_OBUP0109.htm

○報道例: Web上で検索してみますと、無数と言ってもいい程沢山に出てきますので、以下に英文と邦文の報道を二、三例示するにとどめます。

1)  http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/news/fullstory_73404.html
Study Links Osteoporosis Drugs to Jaw Trouble Condition marked by pain, swelling, loose teeth and exposed bone

2) http://www.modernmedicine.com/modernmedicine/Modern+Medicine+Now/Oral-Bisphosphonate-Use-Linked-to-Osteonecrosis-of/ArticleNewsFeed/Article/detail/573702
Oral Bisphosphonate Use Linked to Osteonecrosis of the Jaw Four percent of patients at dental school with history of oral bisphosphonate use have jaw problem

3)  http://www.drug-injury.com/druginjurycom/2009/01/fosamax-update-january-2009-more-osteonecrosis-of-jaw-cases-reported-in-medical-journal--new-possible-link-between-fosamax-a.html
Fosamax Update January 2009: More Osteonecrosis Of Jaw Cases Reported In Medical Journal

4)邦文報道  http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=7096
経口骨粗鬆(しょう)症治療薬による顎骨壊死は予想以上に多い

  ビスホスホネート薬の薬効機作である骨吸収抑制作用からは全く予期されなかった副作用である顎骨壊死の発症頻度は、初めは高用量の静脈注射では高いにしても、経口投与では極く低いとされていました。

  しかし、米国のロサンゼルスにある南カリフォルニア大学歯学部臨床歯科学教室助教授のParish Sedghizadeh博士は、以前は極めて稀であった顎骨壊死の症例が最近はかなり頻繁にみられるようになったので、歯学部の電子カルテデータを調べた結果、経口ビスホスホネート製剤でも処方頻度が高くなるにつれて顎骨壊死が高頻度で認められるようになり、有病率は約4%であったというのです。

  この論文でとりあげられた製剤はアレンドロン酸ナトリウム水和物 [我が国では、フォサマック(万有)およびボナロン(帝人ファーマ)] ですが、日本ではこの製剤を含めてビスホスホネート系薬が今や欧米以上に骨粗鬆症薬として第一選択になっていますので、これは大いに注目すべき事態であると思います。

  以上からして、ビスホスホネート薬の処方せんを持参した患者さんに対して、薬剤師は特に慎重な、そして的確なコミュニケーションの中から出来るだけ早く予兆を察知するよう十分に注意しなければなりませんね。何せ、顎骨壊死は、致命的ではないにしても、極めて著しく患者さんの QOL を下げる実に忌むべき重大な副作用被害ですから。