遠藤浩良の雑記帳 当法人理事長遠藤浩良が個人的意見として発信する『遠藤浩良の薬学雑記帳』をお届けします。 薬学、薬業、医療に関する資料、情報、意見など盛りだくさんな内容です。
No.003
タミフルは下水処理で分解できない!

 つい先日、小生は歯肉炎で歯が浮いてしまったので経口セフェム系抗菌薬をたっぷり服みましたが、実はこのとき同時に、前立腺肥大に伴う残尿のためと思われる慢性的な軽い膀胱炎が見事に収まってしまったのです。ということは、この抗生物質のアクティブ・メタボライトが尿中に排泄されていることを意味しますから、「俺はこの尿が排出された下水道系でセフェム系に対する耐性菌を生み出す犯人になっているのではないかな」と心配になりました。

 同様な意味で、「あまりにも大量なタミフルを消費する日本は、世界で薬剤耐性インフルエンザウイルスを産み出す元凶だと非難されることにならないか」という問題が以前から懸念されていましたが、今これが現実になりそうです。

 以下の論文を見て下さい。

Antiviral Oseltamivir Is not Removed or Degraded in Normal Sewage Water Treatment: Implications for Development of Resistance byInfluenza A Virus (PLoSONE 2(10): e986. doi:10.1371/journal.pone.0000986)
http://www.plosone.org/article/fetchArticle.action?articleURI=info:doi/10.1371/journal.pone.0000986

 即ち、スウェーデンのウメア大学の研究チームは、タミフルの尿中活性代謝産物は、通常の下水処理では取り除けず、更に紫外線照射によっても分解されないので、結局は排水と共に自然界に放出され、そのため排水口近くの野生のカモなどがこれを餌と一緒に摂取した場合には、インフルエンザA・ウイルスが突然変異を起こしてタミフル耐性を獲得してしまう危険性があるという研究結果を、オンライン・ジャーナルの PLoS One 誌に発表したのです。

 即ち、タミフルが大量に処方された場合、体外に排出される活性代謝産物のオセルタミビルカルボン酸の濃度が高まるので、世界的な流行が懸念されている H5N1 ウイルスに耐性を与えてしまうリスクが高まる可能性が十分あるので、”タミフルは、医療上どうしても必要な場合以外には処方することを止めるべきである”としているのです。

 著者らは、”多くの国ではタミフルの使用量は少ないのでさほど耐性ウイルスの出現を心配することはないであろうが、インフルエンザに罹患すると何とその1/3という多数の患者がタミフルを服用するというタミフル多量消費国の日本にあっては、タミフル耐性インフルエンザウイルスを生み出す潜在的なリスクが極めて高い”と名指しているのです。

 これには、以下のように、日本語の紹介報道もあります。

タミフル大量処方が自然界のウイルス耐性強化の原因に、日本にも影響 (AFPBB NEWS 10月3日)
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2292560/2204865

(原文:Bird flu: Abuse of Tamiflu can create resistant strains, says study)
http://afp.google.com/article/ALeqM5johTPaZnrC32MSU6WyDgsQL4KcGA

 これは重大な問題提起なので、以下に例示するように、メディアも早速に大きく報道しています。

 日本としては、世界のためにも大いに心しなければならないことですね。