IME 特定非営利活動法人 医療教育研究所 代替医療情報 光本泰秀教授
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補完医療外来から今後を考える

北陸大学薬学部 医療薬学講座代替医療薬学分野 教授 光本 泰秀

 補完代替医療(CAM, Complementary and Alternative Medicine)で利用されている手法や材料について,それらの情報がインターネットやマスコミなどを通して容易に入手できるようになってきた。健康維持や疾病予防に対する意識の高まりと相まって,それらの情報を求め,実際に利用を望む人たちも増加傾向にあるように思う。わが国には,公的に認められた(国家資格として)CAM全般について助言できるような専門職は無い。様々な情報が氾濫するなかで,一般の人たちにCAMの有用性や安全性について正しく理解されているとは限らない。そのような中で先ず立ち上がったのが,同医療に関わりの深い医学関係者である。

 平成17年1月大阪大学大学院医学系研究科に,伊藤壽記教授のもとCAMに関する講座として生体機能補完医学寄附講座が開設された。国内の大学医学部では,金沢大学に続いて2つ目となる。平成27年1月からは講座名を統合医療学寄附講座と改め,大野智准教授を中心に統合医療を推進するために、科学的根拠(エビデンス)を「つくる」「つたえる」「つかう」の3つの視点で捉え研究・教育、臨床に取り組んでいる。当該講座では,補完医療外来を開設し,補完医療に関する相談及び情報提供や補完医療に関する臨床試験の2種類の診療も行っている1)。前者についての対象疾患及び対象者は,がん,その他の疾患に罹患し,治療を受けられている,もしくは以前に治療を受けられていた方に限られる。受診の際には主治医からの紹介状が必要で,電話による事前問診を行うことが当該講座のHPでも案内されている。ここ数年,CAMを積極的に導入し,統合医療を目指した民間の医療機関も増えつつある。診療に関わる制度的な話しは別としてCAMのメリットが現代医療に活かされ,患者がその利益を被ることができれば,正に統合医療が実践的に成果を生み出したことになる。

 ここで一つ考えなければいけないことがある。それはCMAの利用者や情報を求めている人たちが,患者だけではないということである。健康の維持・増進を目的に利用を考えている人たち,また病気と診断されるまでもないが,身体の様々な不調を訴える人たち,いわゆる未病の状態にある人々が病気の予防や不調の改善を目的にCAMの効果を期待している場合がある。これらの人たちは,様々な方法で自ら情報を収集せざるを得ない。厚生労働省や国立基盤・健康・栄養研究所が,それぞれ「統合医療」情報発信サイト2)や「健康食品」の安全性・有効性情報3)を通して,それらに関する客観的な情報の提供に努めているが,一般の人たちが容易にその内容を理解するためにはやはり何らかのサポートが必要ではないかと考える。CAMに関する情報を求めている人たちに対して,ある程度の専門的な知識を持って情報提供や助言できる場所や人が必要ではないだろうか。ドラッグストアに勤務する薬剤師などが最も適任ではないかと思う。今でも一般用医薬品の使用に関してや健康相談などに積極的に対応している姿がそこにはある。その知識の幅を広め,CAMに関する相談窓口としての役割をドラッグストアの薬剤師に期待したいと考える。

 日本補完代替医療学会では,認定補完代替医療学識医制度を設けている4)。これは,CAMに強い関心と専門的知識を有し,かつ西洋現代医学の立場から的確にCAM領域を理解・精通し,CAMに関する情報を正しく提供できる医師・歯科医師に,それぞれ,日本補完代替医療学会認定補完代替医療学識医(略称:学識医)・日本補完代替医療学会認定補完代替医療学識歯科医(略称:学識歯科医)の資格を付与するものである。この制度は,患者とその家族等のCAMに関する質問に的確な情報提供ができる医師・歯科医師を増加させることを目的とし,それによって,わが国におけるCAM領域の産学の適切な発展を促すことを目指している。将来的には,認定補完代替医療学識薬剤師のような資格ができ,一般向けの情報提供に薬剤師が貢献できることを願っている。

【参考情報】

1) 大阪大学院医学系研究科統合医療学寄付講座・補完医療外来http://osaka-cam.jp/clinic/,2) 厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進持病「統合医療」情報発信サイトhttp://www.ejim.ncgg.go.jp/public/index.html, 3) 国立研究開発法人医療基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の有効性・安全性情報 https://hfnet.nibiohn.go.jp/,4) 日本補完代替医療学会・学識医制度 http://www.jcam-net.jp/gakushikii/index.html