IME 特定非営利活動法人 医療教育研究所 代替医療情報 光本泰秀教授
リフレクソロジー

はじめに

 本年度の日本補完代替医療学会学術集会が12月11日,12日の両日,帝京平成大学・池袋キャンパスにおいて同大学ヒューマンケア学部はり灸学科長の高橋秀則教授を大会長として開催された。シンポジウムでは様々な補完療法の現状やそれらの問題点について報告があった。その中でリフレクソロジーが緩和ケアにおいて高いリラクゼーション効果を発揮していることの紹介があった。日本リフレクソロジスト養成学院の松山悦子先生は,リフレクソロジーは,がん患者特有のむくみや痺れの軽減にも有用で,人体に対して優しい施術法であることから,英国では様々な療法の中でも緩和ケアとして,また優れたセラピーとして,ホスピスや緩和ケア病棟はもちろん,在宅看護にも活かされていると説明していた。今回は,このリフレクソロジーという療法について概説する。

リフレクソロジーとは

 リフレクソロジー(reflexology)という言葉は,reflex = 反射と~ology = ~学を合わせたもので,「反射学」を意味する。その手技は手足の反射区帯に対して関連適応されるプレッシャーテクニックである。対象となる部位は,足裏だけでなく手や耳,顔,背中なども当てはまる。日本では足裏マッサージのイメージがあるが,リフレクソロジーに足裏という単語は含まれていない。このテクニックは,心身のさまざまな器官に手足の反射区帯が相関していることにより,体内・心身ともに完全な調和と均衡をもたらすために機能するものである。リフレクソロジーのテクニックにおいて重要な理論的背景になっているのがゾーン理論である。ゾーン理論は,Dr. W. Fitzgerald(フィツジェラルド博士)により開発されたもので,身体を縦に10等分のゾーンに区切り(図1),各区分内で相関関係があるという考え方である(図2)。この考え方は,足のある部位に加えた圧が麻酔効果として身体の特定部位に現れたという博士の発見に端を発している。

図1

図1

図2

図2

リフレクソロジーの施術法,対象症状及び作用機序

 リフレクソロジーの施術法には,いくつか異なったものがあるが,反射区/点を手の親指で圧を加えながら少しずつ押し進めて行く押し方でサムウォーキングという代表的な手技がある。ただ正しい知識を備え,熟練した技術がなければ過剰な痛みや緊張を与えることになり,身体がストレスフルな状況下に置かれ良くない。
 リフレクソロジーは,基本的に心身におけるアンバランスを改善し,自己治癒能力を活性化する。適応される症状は様々で,不眠,頭痛,肩こり,腰痛,浮腫,胃腸症状,便秘,冷え,眼精疲労,生理不順などこれらを愁訴とする更年期障害,自律神経失調症などに効果があるとされている。医療現場での応用例としては下記のものが挙げられる。
産婦人科領域:妊婦への腰痛,分娩時の陣痛緩和など。 内科領域:血糖,降圧コントロールなど投薬での効果が得られにくく,薬の選択が難しい症例に対して値の安定が図りやすくなる。
精神科領域:うつ病患者での主訴の改善,不眠患者の睡眠剤内服量,回数の減少。
 リフレクソロジー施術の効果発現にどのような作用機序が関わっているかは,今後詳細な科学的解明が進んでいくものと思われるが,現時点で下記のようなことが考えられている。
① 神経反射経路に刺激を与え,その刺激のメッセージが中枢神経を介して対応する部位に伝えられる。
② ミルキングアクションにより血液,リンパ液の循環機能が改善される。
③ 副交感神経優位な状態になる(リラクゼーション効果)。
④ 心理的な要因によるプラセボ効果。
 先に述べたようにリフレクソロジーは,痛みをやわらげる=“緩和ケア”としての効果が検証され,アメリカや英国を中心に,ホスピスや緩和ケア病棟で広く活用されている。西洋医学を補う有用な補完医療として,医療現場において今後ますますそのニーズは増していくと考えられる。

【参考文献】

市野さおり:リフレクソロジー,渥美和彦編:統合医療-基礎と臨床-,Part 2. 【臨床編】,日本統合医療学会,pp.102-108,2007